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【社会】午後の酒類販売解禁試行で観光需要と小売売上は本当に伸びるのか 180日間検証へ

タイ政府は、53年間続いてきた午後のアルコール飲料販売禁止措置を期間限定で解除した。これまでスーパーやコンビニなどは午後2時〜午後5時の販売が禁じられていたが、今後180日間は午前11時〜深夜零時まで販売できる。これにより年末年始の観光需要拡大および小売・外食の売り上げ増が期待されている。

この規制は1972年、軍政下で導入されたもので、本来は公務員の勤務時間中の飲酒を抑えることが目的だった。ただし空港や一部ホテル、娯楽施設では例外があり、地域によって取り締まりの厳しさもばらつきがあった。小規模飲食店では午後の販売禁止時間帯に「裏メニュー」のように酒を出す例も少なくなく、実効性には疑問の声もあった。

今回の規制緩和は、アルコール飲料管理委員会(ABCC)が11月に試験的解除を決め、12月3日付の官報に告示されたもの。告示によれば、試行期間終了後、交通事故や治安への影響、観光と消費への効果などを検証し、恒久措置とするか再規制するかを判断する。

一方、保健当局や一部の市民団体は、飲酒運転や家庭内暴力の増加を懸念する。特にタイは仏教国であり、教義上は飲酒を慎むことが推奨されている。ただ、現実には飲酒文化が根付いている。政府は規制緩和と並行して交通検問の強化や飲酒運転罰則の周知キャンペーンを行い、健康リスクや社会的トラブルを抑えたい考えだ。

新ルールでは、販売は深夜零時までに制限される一方で、バーやクラブなどのナイトスポットでは、客が店内にいる場合は翌午前1時まで飲酒を続けることができる。この措置は事業者側から歓迎されている。

また、観光業界では、午後の買い物需要が取り込めることで免税店やコンビニの売り上げ増につながるとの期待感を示す。ただ、その一方で、所得格差や家計債務が重い中、アルコール消費の増加が家計をさらに圧迫する可能性も否定できない。今回の緩和は、観光振興と公衆衛生のバランスをどう取るかという、タイ経済が抱える古くて新しい課題を映し出していると言えそうだ。

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