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【食品】タイ食品大手がNet Zero2050宣言 900品の低炭素食品で17カ国をつなぐ

タイ食品大手チャルン・ポカパン・フーズ(CPF)は、バンコクで開かれた「Sustainability Forum 2026」で、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする「Net Zero2050」の達成に向けた取り組みを改めて示した。プラシット・ブンダンブラソートCEOは、「CPFは製造業としてサプライチェーン全体で環境負荷を管理する責任があり、持続可能性を“負担”ではなく競争力の源泉と位置づけている」と強調する。

CPFは現在、17カ国に生産拠点を持ち、製品を50カ国に輸出。世界中の農場や加工工場で同じ水準の環境管理と品質を維持するには、人工知能(AI)やブロックチェーン、バイオガス発電などの技術を駆使し、飼料生産から畜産、食品加工まで一貫して排出量を把握する必要があるとプラシットCEOは指摘する。タイとベトナムの工場をモデルケースとし、全拠点で共通の基準を適用していく考えだ。

同社はNet Zero2050に向け、4つの中核戦略を掲げる。第1は「持続可能なエネルギー利用」で、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギーの導入を進め、2030年までに使用電力の100%を再エネで賄うことを目標とする。第2は「持続可能なオペレーション」で、工場や物流工程での資源利用を最適化し、2030年までに廃棄物の埋立処分をゼロにする方針でだ。第3は「持続可能な農業」で、配合飼料や飼育方法を改善し、メタンなど農業由来の排出削減を図る。第4は「持続可能な調達と消費」で、責任ある原材料調達と消費者への啓発を通じて、フードロス削減や森林破壊の回避を進める。

気候変動対策では、国際的なイニシアチブ「SBTi(Science Based Targets initiative)」の承認を受け、2030年までにFLAG(森林・土地・農業)領域の排出量を30.3%、非FLAG領域を42%削減し、2050年までにそれぞれ72%、90%削減する目標を設定した。CPFは世界で初めて、FLAG・非FLAGの双方について長期・短期のSBTi認証を取得した食品メーカーでもある。

製品面では、「低炭素製品」の拡充を通じて消費段階での排出削減を後押しする。タイ温室効果ガス管理機構(TGO)の認証を受けたカーボンフットプリント表示製品は950品目前後に達し、このうち120品目が温室効果ガス削減ラベル、2品目がカーボンニュートラル製品、さらに2品目がネットゼロ製品として認定されている。また、2024年時点で「低炭素・気候配慮型食品」は900品超に広がっており、鶏卵や加工卵、惣菜など日常的に消費される商品が中心となる。

同社は、チリ入りボローニャソーセージ「CP Bologna with Chilli」をタイ初のネットゼロ食品として市場投入し、製品単位でのゼロエミッション実現をアピール。残余排出はカーボンクレジットで相殺しつつ、製造工程の効率化や再エネ導入で実排出量そのものを大幅に抑えている。プラシット氏は、こうした取り組みを通じて「サステイノベーション(Sustainovation)」――持続可能性とイノベーションを統合した事業モデル――を確立し、環境負荷の低い食品をグローバル市場に提供していくと述べた。

一連の戦略は、単に排出量を減らすだけにとどまらない。農家やサプライヤーを巻き込んだ脱炭素化を進めることで、将来強まるであろう輸入規制や炭素国境調整への対応力を高め、タイ発食品企業としての国際競争力を維持する狙いがある。CPFのNet Zero2050は、タイ食品産業全体にとっても「どこまで踏み込むか」のベンチマークともなりそうだ。

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