【政治】エクニティ財務相に次期首相候補打診 写真騒動受け出馬判断が慎重に
タイのエクニティ副首相兼財務相は、次期総選挙に向けて与党の一角であるタイ威信党から次期首相候補に擁立したいとの打診を受けていることを認めた。ただし、まだ受諾するかどうか決めておらず、「現時点では経済問題の立て直しと財務相としての職務に集中したい」と述べ、出馬の可否は慎重に見極める考えを示した。
エクニティ氏はテレビ番組「ジョールック・トゥアタイ」に出演し、詐欺事件の容疑者とされる「ベン・スミス」と同じフレームで写った写真が拡散し、政治的な批判を浴びている件について、「誰に連れてこられた人物かも知らず、通常通り求められるまま写真撮影に応じただけだ」と説明。違法行為には一切関与していないと強調した。そのうえで「政治の世界でここまで細心の注意を払わねばならないとは想像していなかった」と述べ、今後は写真撮影や名刺交換にも一層慎重になる考えを示した。
同氏は、政界入りの目的はあくまで経済運営であり、「国のために仕事をする覚悟で入閣した。今回の騒動を理由に、過去の決断を後悔しているわけではない」とも語った。ただ、写真問題が家族や周囲に与えた影響は小さくなく、「次の選挙に立候補するかどうかを考えるうえで、大きな要素になっている」と認めた。
タイ威信党のアヌティン党首(首相)は、次期総選挙では同党から複数の首相候補を擁立する方針を明らかにしており、そのなかでエクニティ氏を「2人目の首相候補」として起用する構想を示唆している。既に同党はエクニティ氏とスパジー商務相を首相候補リストに加える方向で調整を進めているようだ。
もっとも、エクニティ氏自身はまだ同党の正式な党員ではなく、本人も「今は経済担当閣僚として与えられた任務を全うすることを優先している」と言葉を濁す。報道陣から「もし時間を巻き戻せるなら、このポストを引き受けていたか」と問われると、「後悔していない。与えられた責任を果たすだけだ」と慎重な姿勢を崩さなかった。
エクニティ氏は財務相として、外国直接投資や大型インフラ案件の停滞解消に向け、約92億ドル相当の保留案件を一括処理する「ファストパス」構想を打ち出すなど、経済運営の前面に立つ。タイ南部で続く大規模洪水や高インフレ、成長率の鈍化など課題が山積するなか、財務相と首相候補という二重の役割を引き受けるかどうかは、同氏自身だけでなく、タイ威信党の次期選挙戦略とタイ経済運営の行方を左右することになりそうだ。
