【経済】タイ南部大洪水で年末観光が壊滅 予約はほすべてキャンセル 経済損失拡大が深刻に
タイ南部ソンクラ県ハートヤイ市で続いた大規模洪水で同市内には泥とごみの山が残り、悪臭と衛生不安が消えていない。地元ホテル協会によると、通常ならマレーシアなどから観光客が押し寄せる年末年始の宿泊予約は、今年はほぼ全件がキャンセルされ、昨年満室だったホテルも空室だらけという。洪水で地下駐車場やロビーまで浸水したホテルも多く、営業再開には客室改装や設備交換が必要で、資金繰りが急速に悪化している。観光業者は、年末商戦と2025年シーゲームズの競技開催で地域のイメージ向上を図る計画だったが、洪水の影響で競技会場はバンコクに変更され、PR機会を失ったと肩を落とす。
ハートヤイ・ソンクラー両市の事業者は、観光収入の逸失額を現時点で70億バーツと試算し、来年1〜2月までに市街地の完全復旧が遅れれば、損失は100億バーツ規模に膨らむ恐れがあると警告する。タイ商工会議所大学は、南部10県全体の洪水被害額を400億バーツ(国内総生産の0.22%)と推計しており、その多くが宿泊・外食・小売りなどサービス業に集中すると分析。タイ国政府観光庁もソンクラー県の11月の観光収入が前年同月比で8%超落ち込んだと報告しており、12月も鉄道・バスの運休とホテル休業で減収が続く見通しだ。
現地では道路や給水設備の復旧が遅れ、従業員が通勤できないケースも多い。観光関連団体は、軍や中央政府による清掃要員と重機の投入を急ぐとともに、中小企業向けの無利子融資や返済猶予、観光振興キャンペーンなど総合的な支援策を求めている。
同市は南部の商業・物流ハブであり、飲食店や小売りのほか工業団地や倉庫も浸水被害を受けた。マレーシアとの国境貿易や日系企業の出張需要にも影響が及んでおり、企業は取引先の操業状況とサプライチェーンへの波及を慎重に見極める必要がある。
