【資源】タイ廃プラ2027年100%再資源化へ 炭素国境調整措置見据えた先行投資が必要に

タイでは温暖化対策と資源循環を両立させる政策が加速している。国内で発生するプラごみは年320万トン超とされるが、埋立地での埋設は分解が遅くメタンが発生し、焼却でもCO2が出る。このため、タイ政府は「プラスチック廃棄物管理ロードマップ2018~2030」を立ち上げ。2027年までに対象プラごみの100%を再利用・再資源化する目標を掲げ、ボトルやキャップ、袋、単層フィルム包装など使い捨て品の回収と分別を急ぐ。
官民連携のPPP Plasticsはタイ工業連盟(FTI)などと連携し、対象プラの使用削減と回収・再利用の2本柱で海洋ごみも減らす方針だ。石油化学分野では28社が参加する業界団体が、廃プラを高付加価値材に転換する取り組みを掲げる一方、統計が不十分で実態把握が難しい点も残る。それでもタイ政府はBCG(バイオ・循環・グリーン)モデルを国家戦略に位置付け、循環経済を加速させる構えだ。バイオ由来素材ではサトウキビ由来エタノールを原料にした樹脂も選択肢になる。
輸出面ではEUの炭素国境調整措置(CBAM)が2023~2025年に排出量報告を義務化し、2026年から本格運用に移る。対象は現時点で鉄鋼、アルミ、セメント、肥料、電力、水素だが、将来の対象拡大や下流製品への適用拡張も議論されている。PPP Plasticsは自治体、地域コミュニティ、リテールとも組み、使用済み袋やフィルムの回収拠点整備などを進め、循環モデルは年70万トン規模の処理能力を想定。CBAMの移行期間は報告義務にとどまり証書購入は不要だが、制度の核は排出量の算定と証明であり、供給網のデータ連携が先行投資になる。製品設計から廃棄までのCO2を減らす視点が欠かせず、包装材や樹脂を扱う日系は、再生材比率の設計、排出量データの整備、再エネ電力の調達、回収スキーム参加を早め、欧州顧客の要件と国内制度の両面に備えたい。
