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【経済】タイ通貨バーツが31.15まで急伸、金高騰が牽引 当局はオンライン取引に緊急3規制

タイの通貨バーツが12月に入って上昇を強め、12月22日には1ドル=31.15バーツまで買われ、4年半ぶりの高値圏に達した。カシコン・リサーチセンターによると、12月19日の31.46から約0.9%上昇。11月末の32.20からは3.0%高となり、地域で最も強い通貨の一つに浮上した。

市場が主な要因として挙げるのが金価格の記録的高騰である。金取引に伴うドル売り・バーツ買いが膨らみ、国内景気など基礎的条件に見合わない速さで相場が動いたとの見方が出ている。SCBフィナンシャル・マーケッツは、地政学リスクの高まりで安全資産需要が強まり、金が最高値圏に入ったことが押し上げたと分析する。テクニカル面でも31.40〜31.30の節目を割り込んだことで上昇期待が強まった。一方で短期債への資金流入は乏しく、年末の流動性低下が変動を増幅しているという。

タイ中銀は同日、オンラインの金輸出入事業者14社と会合を開き、取引報告の強化を協議した。財務省もバーツ高が輸出や観光の競争力を損なうとして、オンライン金取引への課税や取引量抑制策を検討している。金相場は同日、スポットで1オンス=4413.01ドル、米先物2月限が4442.40ドルまで上伸し、年初来の上昇率は約68%に達したとされる。財務省は年初からのバーツ上昇が約10%に及び、実体経済とかい離した値動きだとして、税務当局によるデータ提出義務化や大口取引の上限設定も視野に入れる。中銀は2026年の物価目標を1〜3%に据え置く方針も示した。

こうした動きを受け、財務省・中銀・証券取引委員会(SEC)は12月23日、オンライン金取引を狙い撃ちする緊急3対策を決定した。副首相兼財務相の指示で財務次官が中銀総裁、SEC事務局長と緊急協議し、共同会見で方針を示した。政府広報によると、バーツは2025年初来で対ドル9.4%上昇し、直近1カ月でも約4.2%上げた。背景には米利下げ観測でドルが弱含む一方、金価格が過去最高圏に入り、金関連企業が外貨を大量に売却してバーツ買い圧力を強めた構図があり、一部では海外勢の国債買いも重なったとされる。

当局が掲げた3措置は、①歳入局がオンライン金投資プラットフォームに取引データ提出を義務付け、資金移動の監視を電子商取引と同水準へ引き上げる②オンラインで金地金を売買する事業への特定事業税(SBT)導入を検討し、投機的取引の過熱を冷ます③中銀が取引量に上限(キャップ)を設けるなど取引規模そのものを抑えるーの3点だ。金取引の1日当たりの総額はタイ証券取引所(SET)の売買代金に近い水準に膨らみ、ピーク時は金業者のドル純売りが国内の純売りの最大50%を占め、局面によっては40~50%に達したという。中銀は既に金取引に伴う外為取引の監視を強め、主要金商に日次報告を求めており、今後は大口取引をバーツ建てで管理し、26年1月半ばをめどに大手業者の取引量上限を設定する見通しだ。

SECは「ステーブルコイン取引が原因」との見方を否定し、USDTは外貨流入の1.22%、デジタル資産業者のドルからバーツへの転換は総流入29.1兆バーツの0.17%にとどまるとして影響は小さいと説明した。3機関は街中の金店など通常取引は対象外としつつも、市場が経済の基礎条件から乖離する動きが続けば追加策も辞さない構えであり、来年1月にも具体案を公表する見通しだ。ただ、金商協会は課税が取引縮小と波及を招くとして慎重論を示しており、当局は実効性を急ぎ検証する。

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