【経済】バーツ相場が4年9カ月ぶりの高値圏 金価格上昇と米利下げ観測で上昇圧力強まる
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タイバーツの対米ドル相場が急騰し、2025年12月末時点で1ドル31.02バーツと、約4年9カ月ぶりの高値を付けた。この上昇の背景には、米連邦準備制度理事が来年さらに金利を引き下げるとの観測が強まったことに加え、国際的な金価格の記録的な上昇がある。タイでは金取引が盛んであり、価格上昇に伴う金売却による外貨流入がバーツ買いを後押しする構造となっている。
通年で見ると、米ドルは対主要通貨で約10%下落しており、2003年以来の低水準を記録。一方で、欧州中央銀行の利上げ継続への期待からユーロが急騰しており、世界的なドル独歩安の様相を呈している。こうした急速な通貨高は、タイの基幹産業である輸出や観光業に影を落とす。輸出業者は利益の目減りを懸念しており、タイ中央銀行に対してさらなる介入や金利調整を求める声を強めている。
これを受け、中央銀行は12月、バーツが短期間に2.5%も上昇したことを受けて市場介入を実施した。ビタイ総裁は「バーツの過度な変動は経済回復の妨げになる」と述べ、金取引業者や為替ディーラーへの監視を強化する方針を示した。中央銀行は為替変動の影響を抑えるため、企業に対して資本財の輸入を奨励するなどの対策を打ち出している。
その一方で、金市場では2026年に金価格が1バーツあたり7万バーツに達するとの強気な予測もあり、投資家がポートフォリオを現金から金や他国通貨へ分散させる動きも活発化している。タイ経済にとって、バーツ高は輸入コストを抑える利点があるものの、輸出競争力をいかに維持するかが大きな課題となる。今後も米国のインフレ動向や地政学リスクに伴う金価格の推移が、バーツ相場の決定要因であり続ける。
