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【経済】外貨準備が過去最高更新 バーツ高と介入観測で為替に警戒強まる

バーツが年初来で約5%上昇する中、タイの外貨準備は8月22日時点で過去最高の2896億8000万米ドルに到達。ドル安と金価格上昇が追い風となり、タイ中央銀行(BOT)が過度な通貨高を抑えるため外貨買い・バーツ売りでボラティリティを平準化したとの観測も広がっている。

域内では韓国・台湾通貨も6~8%上昇しており、地域通貨高の流れが鮮明だ。カシコン調査によれば、積み上がりの要因は①為替の平滑化、②資産の時価評価(特に金比率は9.5%まで上昇)、③経常黒字による資金流入だ。国際基準でも、短期対外債務に対する準備は2.7倍、輸入カバーは9.5カ月と十分性は高い。外貨準備の厚みは外部ショックに対する耐性を高め、市場の信認を下支えする。

為替は足元32.28バーツ/米ドルで、短期は32.20~32.30のレンジが意識されている。年内には31.50に接近するとの観測もある。変動率は過去2~3年の3~5%から7~9%へ上昇しており、価格条件やヘッジ方針の見直しが不可欠となっている。具体的には、①受注価格の為替条項の更新、②積みヘッジの分散(先物為替予約・NDF(ノンデリバラブル・フォワード)・オプションの組合せ)、③ドル建債務と外貨預金のバランス管理、④在庫水準の適正化―を検討したい。

一方、過度な準備積み上げは米国の通貨監視リスト入りを招く可能性も指摘される。BOTは実体経済への波及を見極めつつ、市場機能を損なわない範囲で過度な変動を抑える綱取りが求められる。輸出企業は為替高に伴う価格競争力の低下を、コストダウンと付加価値の積み上げで相殺する戦略が必要。輸入企業にとっては、原材料・設備の調達コスト低下が利益に寄与しやすい一方、為替の急伸は国内販売価格の調整遅れを招くため、販価と在庫回転の同時管理が鍵となる。

準備の金比率が9.5%へ高まったことは評価益の源泉であると同時に、価格変動の影響も受けやすくなる点に留意が必要。

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