タイ政府は2025年1月1日から1日当たりの法定最低賃金を引き上げ。ただ、トランプ相互関税への危機感から更なる賃上げは様子見。

タイ政府は2025年1月1日から1日当たりの法定最低賃金を引き上げ、最高額400バーツ、最低額337バーツとしました。最も人口の多いバンコク都は9バーツ引き上げられ、372バーツとなっています。このため、バンコク都の入国管理局(イミグレーション)では、VISA新規申請者もしくは更新者のために告知(写真)。翻訳は以下の通りです。
「最低賃金の関する賃金委員会の発表により、2025年1月1日からバンコク都内の最低賃金は372バーツとなります。そのため、2025年1月以降に提出する個人所得源泉所得税申告書(PND1)におけるタイ人の最低月給は372バーツ✖30日で1万1160バーツ以上となります」
タイ政府は昨年、「2025年の新春お年玉」として、1日当たりの法定最低賃金を全国一律400バーツに引き上げると約束していましたが、400バーツへの引き上げは一部の県もしくは郡にとどめられることになっています。タイでは最低賃金の最終決定権は政府ではなく、政府・雇用者・被雇用者の代表で構成される最低賃金3者委員会が持っており、同委員会が賃上げによる中小企業の経営破綻を懸念。そのため、最高額は400バーツ、最低額は337バーツで、平均引き上げ率は2.9%に落ち着きました。
ただ、中核与党・タイ貢献党は一昨年5月の総選挙の際、2027年までに1日当たり最低賃金を全国一律600バーツにまで引き上げると公約しているため、タイ政府は今年に入り、5月1日のメーデーに最低賃金を全国一律400バーツに引き上げると公言。これに、最低賃金3者委員会の雇用者代表が抵抗していましたが、米国による関税率大幅引き上げの可能性が出てきたことで、被雇用者側からも懸念の声が浮上。そのため最低賃金引き上げの検討は先送りされています。
1日当たり法定最低賃金(単位バーツ)
新最低賃金 | 旧最低賃金 | 対象都県 |
400 | 370 | プーケット県 |
400 | 361 | チョンブリ県 |
400 | 361 | ラヨン県 |
400 | 350 | チャチュンサオ県 |
400 | 345 | スラタニ県コサムイ郡 |
380 | 350 | チェンマイ県ムアン郡 |
380 | 345 | ソンクラ県ハートヤイ郡 |
372 | 363 | バンコク都・ナコンパトム県・ノンタブリ県・パトゥムタニ県・サムットプラカン県・サムットサコン県 |
359 | 352 | ナコンラチャシマ県 |
358 | 351 | サムットソンクラム県 |
357 | 350 | コンケン県・チェンマイ県(ムアン郡を除く)・プラチンブリ県・アユタヤ県・サラブリ県 |
356 | 349 | ロッブリ県 |
355 | 348 | ナコンナヨク県・スパンブリ県・ノンカイ県 |
354 | 347 | クラビ県・トラート県 |
352 | 345 | カンチャナブリ県・チャンタブリ県・チェンライ県・ターク県・ナコンパノム県・ブリラム県・プラチュアプキリカン県・パンガ県・ピサヌローク県・ムクダハン県・サコンナコン県・ソンクラ県(ハートヤイ郡を除く)・サケオ県・スラタニ県(コサムイ郡を除く)・ウボンラチャタニ県 |
351 | 344 | チュムポン県・ペッブリ県・スリン県 |
350 | 343 | ナコンサワン県・ヤソトン県・ラムプン県 |
349 | 349 | ガラシン県・ナコンシタマラート県・ブンガン県・ペチャブン県・ロイエット県 |
348 | 341 | チャイナ―ト県・チャイヤプム県・パタルン県・シンブリ県・アントン県 |
347 | 340 | カンペンペット県・ピチット県・マハサラカム県・メーホンソン県・ラノン県・ラチャブリ県・ラムパン県・ルーイ県・シーサケット県・サトゥン県・スコタイ県・ノンブアラムプ県・アムナートジャルン県・ウドンタニ県・ウタラディット県・ウタイタニ県 |
345 | 338 | トラン県・ナン県・パヤオ県・プレー県 |
337 | 330 | ナラティワート県・パッタニ県・ヤラ県 |