【政治】アヌティン氏が第32代首相に就任 注目される閣僚配分と政策運営
9月5日、タイ下院は首相指名選挙を前倒しで行い、アヌティン・チャンウィラクン氏(タイ威信党党首)が新首相(第32代)に選出された。賛成は313票、反対142票で、必要な過半数を大きく上回った。
ただ、賛成票を投じた最大野党・人民党は連立与党には加わらないことから、アヌティン氏が率いる政権は下院議席500議席中146議席しかない少数政党となる。
アヌティン氏は首相に選出された後、直ちに組閣作業に入った。これまでのところ各党派・グループに割り振られる閣僚ポストは以下の見通しだ。
- タイ威信党:12ポスト
- グラータム党:7ポスト(うち大臣4、副大臣3)
- 国民国家の力党(パランプラチャーラット):4ポスト
- スチャート氏グループ:4ポスト
- サクダー氏グループ(タイ貢献党系):2ポスト
- ニポン氏グループ:1ポスト
- 外部人材(テクノクラート)枠:5ポスト
予想される主要閣僚の顔ぶれ
アヌティン氏は首相に加え内務相を兼務。タイ威信党からは以下の人事が有力視されている。
- 副内務相:サビーダ・タイセート氏
- 高等教育・科学・研究・イノベーション相:チャイチャノック・チットチョープ氏(党幹事長)
- デジタル経済社会相:スパマート・イスラパクディ氏
- 運輸相:ピパット・イサラパクディ氏
- 首相府相:プラドン・プリサナナントクン氏
外部枠としては、財務相に元タイ銀行総裁のセータプット・ストゥタワナルポット氏、エネルギー相にスパッタナポン・パンミチャオ氏、外務相に元外務次官のシハサック・プアンゲトケオ氏が候補に挙がっている。
グラータム党は国防相にタマナット・プロムパオ氏、農業共同組合相にアタコン・シリラッタヤコン氏、教育相にナルモン・ピンヨシンワット氏、社会開発人権保護相にアタラ・ポンパオ氏などを推す構え。
一方、国民国家の力党はサンティ・プロムパット氏を副首相兼保健相とし、国防相にプラウィット・ウォンスワン党首の側近ナット・インタラジャルン将軍を推薦する動きがあり、タマナット氏との調整が難航しそうだ。
スチャート・チョムクリン氏率いるグループには天然資源環境相や工業相など経済系ポストが割り当てられる見通し。
日本企業への影響
アヌティン新政権は少数与党体制であり、政策遂行には調整力が問われる。ただ、インフラ整備、エネルギー、デジタル経済分野の閣僚にテクノクラートを登用する姿勢は外国企業にとっては歓迎できる点だ。
- 財務・エネルギー・外務の要職に専門家が入ることで、投資環境改善が進む可能性がある。
- 運輸相にピパット氏が就任予定であり、鉄道・物流関連案件の推進に弾みがつくと見られる。
- デジタル経済社会省の人事は、外国企業のデータセンターやAI分野進出に影響を与える可能性が高い。
今後の焦点は、各党間の利害調整と経済政策の具体化。とりわけ外国投資家にとっては、エネルギー価格安定策、デジタル分野規制、インフラ整備ロードマップの明確化が注目される。
