【政治】カンボジア前首相「国境閉鎖500年でも問題なし」 タイ首相は冷静対応
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タイとカンボジアの国境紛争をめぐり、カンボジア側が国境閉鎖の長期化を示唆した発言を行ったことに対し、アヌティン首相は記者団からコメントを求められたものの、「その発言についてはまだ読んでいない」と述べるにとどめ、慎重な姿勢を示した。
カンボジアのフン・セン上院議長(前首相)はこれまでに、「たとえ国境が今後500年間閉鎖されたままでも構わない」と発言しており、両国関係の緊張を象徴する言葉として受け止められている。
両国は最近、武力衝突の再発を受けて和平合意文書に署名したものの、国境検問所の多くは依然として閉鎖されたまま。2025年7月の国境危機では、全18カ所の国境検問所が一時閉鎖され、7月のタイ・カンボジア間貿易額はわずか3億7600万バーツと、前年同月比97.5%減まで落ち込んだ。
タイ商務省によると、2024年のタイ・カンボジア間の国境貿易額は約1750億バーツに達しており、国境閉鎖が長期化すれば通商・物流・観光など広範な分野に影響が及ぶ。経済専門家からは、国境検問所の閉鎖が年末まで続いた場合、タイ側の輸出損失は600億バーツを超える可能性も指摘されている。
一方で、カンボジア側にとってもタイは重要な貿易相手国であり、2024年の両国貿易額は43億ドル規模に達したものとみられている。国境地帯ではカッサバなど農産品の輸出や越境労働、観光収入に依存する地域が多く、紛争と閉鎖の長期化は双方の地方経済にとって大きな打撃となる。アヌティン首相には、感情的な応酬を避けつつ、ASEANなど国際社会との連携を通じて、実務レベルでの緊張緩和と貿易回復を図ることが求められている。
