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【IT】タイEC市場規模は1兆バーツ超 オンラインショッピング利用者は1600万人超

タイの電子商取引(EC)市場が急拡大している。タイ電子商取引協会(THECA)によれば、タイ国内のEC市場規模は2025年に1兆700億バーツに達し、2030年には2兆バーツへと拡大する見通しだ。ウドムティポック副会長は、「デジタルプラットフォーム上のタイ人販売者の増加と、日常生活におけるオンライン購買の定着が成長を押し上げている」と説明する。

現在、オンラインで積極的に買い物をするタイ人は1600万人を超え、全国のECサイトに出品されている商品数は3億点を超える。人気のプラットフォームにはShopee、Lazada、TikTokがあり、多くの消費者がこれらのアプリを通じて日常的に買い物を行っている。

一方、電子取引開発庁(ETDA)の調査では、広義の電子商取引市場規模が2023年に5.96兆バーツへ拡大したことが報告されており、保険や小売をはじめとする多くの分野でネット販売へのシフトが鮮明になっている。

オンライン支出は年間を通じて行われるが、10〜12月に大きく膨らみ、この3カ月で年間売上の25〜30%が集中。ボーナスや大型セールが重なる年末商戦は各プラットフォームにとっての書き入れ時となる。なお、2025年についてTHECAは、1月から10月までに通年見込みの70〜75%に当たる7490億〜8025億バーツ分の取引がすでに成立したと推計している。

複数の経済研究機関の調査によれば、タイのオンライン購入者の67%超がソーシャルメディア上のコンテンツに影響を受けて商品を選んでおり、ライブ配信や短尺動画を見てすぐに購入ボタンを押す行動が一般化しているようだ。THECAは、こうした「欲しいと思った瞬間に注文し、即時サービスや迅速な配送を当然視する」消費者像を「Impatience Economy(せっかち経済)」と呼び、タイの小売構造を変える原動力になっていると分析する。

この変化は特定の世代に限られない。ベビーブーマー世代や地方の住民を含む全ての年齢層でデジタル取引が日常行動となりつつあり、スマートフォン1台で比較検討から注文、配送状況の確認までが完結する。通信インフラの整備と物流網の拡張により、僻地を含め全国どこに住んでいても短時間で商品が届く環境の整備が進んでいる。

拡大する需要を支えるため、物流分野への投資も加速している。大量の荷物を時間通りに届ける必要から、倉庫の自動化や仕分けシステムの高度化が求められ、タイ国内では大規模な物流センター整備やラストワンマイル拠点の拡充が続く。大手物流企業はAIによる配送ルート最適化を導入し、短納期とコスト削減の両立を図ろうとしている。

 決済面では、タイは現金中心の取引からモバイルバンキングや電子ウォレット、QRコード決済などの電子決済への移行を加速。電子取引開発庁(THECA)は、Eコマースの拡大は消費行動だけでなく、タイ経済全体の構造を変えつつあると指摘する。タイ中央銀行の統計では、電子決済システム「PromptPay」の2025年8月の取引額は月間約4.4兆〜4.6兆バーツに達しており、日常の少額支払いから高額取引まで広範な用途で利用されている。

ETDAが行った「Value of e-Commerce Survey in Thailand 2023」では、タイのEコマース市場価値が2022年の5.43兆バーツから2023年には5.96兆バーツへと増加。オンライン販売が保険や娯楽、一般小売など多くの産業で成長の牽引役となっていることが分かった。

また、タイ中央銀行が実施した中小企業の決済行動調査では、回答した中小企業の96%が何らかの形で電子決済を利用し、決済総額の68%をEペイメントが占めていることも明らかになった。中小企業の間でも、銀行口座を通じたオンライン送金やQRコード支払いが「当たり前の手段」となりつつあり、Eコマースは消費だけでなく企業の資金循環も変え始めている。

ところで、「せっかち経済」がもたらす恩恵は大きい一方で、物流インフラへの負荷やデジタル格差、ネット詐欺対策といった課題も浮かび上がる。スピードと利便性を追求するだけでなく、消費者保護や情報セキュリティ、人材育成を含めた持続可能な成長モデルを描けるかどうかが、タイのEC市場が次の成長ステージへ進めるかを左右することになりそうだ。

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