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【製造】タイ南部洪水で工場715カ所が被害 タイ工業連盟が緊急支援供給網保全対応急ぐ

タイ南部を襲った記録的な豪雨・洪水で、工場集積地であるソンクラー県を中心に産業活動が大きな打撃を受けている。タイ工業連盟(FTI)は、被災工場の操業再開と地域経済の復旧を支えるため、政府機関と連携した救援・支援オペレーションに本格着手した。

FTIのクリアンクライ会長によれば、タイ南部一帯では数百の工場が浸水し、複数業種の生産とサプライチェーンが途絶している。FTIは被害状況の詳細把握と支援策の調整のため、12月1日にソンクラー県ハートヤイへ調査チームを派遣し、最も被害の大きい地域で企業や従業員のニーズを調査。洪水により道路や通信インフラが損壊しており、南部の会員企業とさえ連絡が取りづらい状況が続いているという。

当面の支援として、飲料水や食料、衛生用品など生活必需品の提供に加え、被災企業への資金支援を急ぐ。FTIは軍や地方自治体の救援部隊と連携し、重機を投入してがれきの撤去やアクセス道路の確保を進め、孤立集落や工場への救援活動を後押しする計画だ。工場現場へのアクセスが確保されなければ、設備点検や復旧作業自体に着手できないためだ。

ソンクラー県など南部諸県には、食品加工、飲料、木材・家具、天然ゴム加工、プラスチック製品、包装資材、鉱物採取、砂採取、バイオマス・バイオガス発電、農産物加工など多様な業種の工場が集積。今回の洪水で、これら工場の操業が相次いで停止し、雇用への影響に加え、タイ国内外向けの供給不安も高まっている。

工業省とソンクラー県工業事務所の集計では、同県で被災した工場はハートヤイ、チャナ、ナータウィ、テーパー、サバーイヨーイ、バンクラム、ラッタプム、サダオ、ラノート、クワンニヤン、ナーモム、クローンホイコーン各郡を合わせて715カ所に達し、損害額は少なくとも12億バーツ超と見積もられている。内訳は食品加工工場29カ所、木材・家具工場97カ所、ゴム加工工場103カ所、プラスチック製品工場44カ所、包装資材工場30カ所、鉱物採取関連工場36カ所、砂採取事業310カ所、サービス業施設79カ所、バイオマス・バイオガス発電所17カ所など。

ゴム関連産業向けの工業団地「ラバーシティ」自体は現時点で大規模な浸水を免れているが、周辺道路の冠水により原材料の搬入が滞り、稼働率の低下や出荷遅延が発生。ソンクラーは天然ゴム産地として世界市場とも直結しており、今回の水害でゴム農園が広範囲に被災した結果、最大で約9万トン、45億バーツ相当の天然ゴム生産が失われる可能性があるとの試算も出ている。

南部全体では少なくとも145人が死亡し(政府発表。支援団体の推計では1000人近いとの声もある)、数百万人の住民が洪水の影響を受けていると報じられており、工場被害だけでなく、観光、サービス、農業など広い分野で損失が膨らむ見通しだ。

こうした状況を受け、タイ投資委員会(BOI)はソンクラー県の被災企業に対し、被害を受けた機械を代替する輸入機械への関税免除や、損壊した機械・原材料を税負担なく帳簿から除却できる特別措置を公表した。日系企業を含む進出企業にとっては、設備更新コストの軽減と早期の操業再開に向けた支援となる。

FTIは工業省による被害実態の精緻な公表と支援策の早期具体化を求めながら、会員企業と連携して個別のニーズに応じた支援メニューを組み立てる方針だ。南部拠点の生産網は自動車、ゴム、食品など複数産業でタイ全体のサプライチェーンを支える存在であり、今回の洪水対応は、気候リスクの高まりを踏まえた事業継続計画(BCP)の見直しにも直結する。

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