【貿易】越境ECに影響 タイ政府が26年1月1日から輸入品は1バーツでもVATと関税を徴収

タイ政府は2026年1月1日から、海外から輸入されるすべての商品に対し、輸入価格が1バーツでも付加価値税(VAT)と関税を課す方針だ。ラリダー政府副報道官が17日に説明した。
従来は関税の免税扱いにより安価な輸入品が流入しやすく、国内事業者との競争条件が歪むとする指摘があった。そのため、政府は制度を改め、国内市場の健全化と税収確保を狙う。
同副報道官によると、2025年12月31日までは7%のVATのみを徴収し、関税は課さない。26年以降は、VATに加え、品目ごとに税率が定められた関税率表に基づき課税する。輸入者や越境ECの出店者は、取り扱い品目ごとの税率や申告価格の根拠を事前に確認し、追加コストを織り込んだ販売計画が必要となる。
宅配便経由の輸入では、宅配事業者が事前に申告し一時税を立て替え、受取人が受領時に事業者へ払い戻す仕組みとする。政府は、過小申告や脱税を減らし、異常に安い輸入品の流入を抑えて国内市場の混乱を防ぐ効果を見込む。税収は年間少なくとも30億バーツを見込み、タイ企業の競争力向上につなげるとしている。
一方、複数のオンラインプラットフォームでは、販売時点でVATを徴収するシステムへの調整がすでに始まっている。この場合、購入者は決済段階で税負担が可視化され、受け取り時の追加手続きが簡素化する。ただ、26年以降は品目に応じて関税が上乗せされるため、輸入品の最終価格は上昇する見通しだ。
政府は国民と事業者、とりわけ輸入関係者に対し、変更への備えを呼びかけている。政府は施策を「慎重かつ透明性を持って進め、国民への影響にも配慮する」としており、運用開始前に周知を強化する方針だ。少額輸入にも課税対象を広げることで、これまで課税の網をすり抜けていた低価格帯の取引にも同じルールを適用し、申告価格の適正化を促す。物流現場では、郵便と宅配で徴収の段取りが異なるため、消費者は購入時に配送方法と納税方法を確認することになる。事業者側は、税の立替えや返金手続きが増える分、顧客対応やシステム改修の負担が増す可能性がある。
