【社会】タイ燃料高騰で火葬現場に混乱 チョンブリ県で棺を載せ給油要請 供給不安が公共サービス直撃

タイ東部チョンブリ県で、火葬用の軽油を確保できないとして、寺院の葬儀関係者が遺体を納めた棺を載せた車で給油所に乗り付ける事案が起きた。燃料価格の急騰と供給不安を背景に、買いだめ防止の配給措置が火葬という先延ばしできない公共性の高い用途にも影響を及ぼした格好であり、現場では制度運用の硬直性が浮き彫りとなった。
地元報道によれば、この男性作業員はチョンブリ県内の寺院で火葬を担当している48歳の葬儀関係者で、当初、18L容器3つへの軽油給油を求めて給油所を訪れた。しかし、同給油所は買いだめ防止のため、客が持ち込んだ容器への給油について用途を確認できない限り販売しない方針を取っており、給油を断ったという。転売や買いだめを警戒した措置であった。
これに対し、男性は動画で不満を訴えた後、翌朝、18L容器3つに加え、遺体を納めた棺を荷台に載せた車で再び給油所を訪れた。報道によれば、男性は棺を開けて「火葬に必要な燃料だ」と示し、給油所側は責任者や管理者に確認したうえで給油に応じたという。現場では異例の対応であったが、火葬という緊急性の高い用途であることが最終的な販売判断につながった。
男性によれば、今回の火葬は遺族が経済的事情から火葬を選択していたほか、病院側も遺体保管スペースの都合から早期の処置を求めていたという。葬儀は延期が難しく、必要な燃料は火葬炉の運転だけでなく遺体搬送にも欠かせない。燃料が確保できなければ、葬儀費用の上振れや地方の公共サービス停滞に直結しかねない状況であった。
男性はまた、寺院の火葬設備について、2005年ごろには炭を使っていたが、その後はディーゼルで動く電動式設備に更新され、容器で軽油を購入することが日常業務になったと説明した。設備の近代化に伴い、火葬現場が燃料供給網により強く依存する構造へ変わっていたことが、今回の混乱の背景にある。
背景には、足元の燃料価格急騰と供給不安がある。ロイターは、政府補助の縮小などを受け、ディーゼル小売価格が2月の29.94バーツ/Lから3月には38.94バーツ/Lへ上昇したと報じた。値上がり幅は大きく、漁業など燃料依存型産業では操業停止に追い込まれかねないとの懸念も出ている。今回の事案は、こうしたマクロの燃料問題が火葬や農業機械といった地域の生活・公共インフラにまで波及していることを示した。
