【政治】タイ上院、公的債務抑制に向け付加価値税増税を提案 消費への影響に注視必至
タイ上院の専門委員会は、急増する公的債務を抑制し、財政の健全性を維持するために、現行7パーセントの付加価値税(VAT)を引き上げる検討を開始するよう政府に提案した。この提案は、高齢化社会に伴う社会保障費の増大や、経済成長の鈍化による税収不足を背景とするものだ。ただ、エクニティ副首相兼財務相は、財政規律を維持する重要性を認めつつも、物価高騰が国民生活を直撃している現状での増税には慎重な構えを見せている。それでも、国家経済社会開発評議会(NESDC)の報告書によれば、タイの公的債務は対GDP比で上限の70パーセントに迫りつつあり、財政再建に向けた抜本的な改革が急務となっている。
タイに広がるスタグフレーション懸念
上院委員会が示した試算によれば、VATを1パーセント引き上げるだけで、年間約700億バーツの追加税収が見込まれる。現在の低成長・高インフレというスタグフレーションの懸念が広がる中、政府はデジタルトランスフォーメーションの推進やインフラ投資の継続を掲げるが、その資金源の確保が喫緊の課題となっている。特にデジタル経済社会省が主導する国家デジタル振興計画には多額の予算が必要であり、既存の税収枠内での対応は限界に達している。ただ、日系企業にとっては、増税が実現すれば販売価格への転嫁が不可避となり、消費意欲のさらなる減退を招くリスクが懸念される。
コスト増と消費低迷の板挟みも
現在、タイ人消費者のマインドは冷え込んでおり、タイ小売業者協会による2026年1月の景況感指数は前月比で大幅に下落した。政治的な不透明感に加え、中東情勢の影響による生活必需品の値上げが相次いでいることが要因だ。政府は価格凍結措置などの場当たり的な対応を続けてきたが、それらの終了に伴いインフレ圧力が再燃。そのため、財務省は、無駄な歳出の削減と並行して、税制の公平性を確保するための税基盤の拡大を模索している。
日系製造業や小売業は、コスト増と消費低迷の板挟みになる可能性を想定し、在庫管理の最適化や生産効率の向上といった防衛策を講じることが求められる。
