【経済】タイ中銀総裁、スタグフレーション入りを否定 インフレは長期化せずと強調
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タイ中央銀行(BOT)のウィタイ総裁は4月30日、一部で懸念されているスタグフレーションについて、タイが現時点でその状態にあるとの見方を否定した。
ウィタイ総裁はスタグフレーションの定義に立ち返り、単に「低成長と物価上昇が重なるだけでは不十分」で指摘。経済学的な意味でのスタグフレーションには、インフレが長期間にわたり持続的に高止まりしていることが必要条件であり、タイはその状態には至っていないと説明した。金融政策委員会(MPC)の審議においても、スタグフレーションは議題として取り上げられていないという。
ただ、タイの製造業は厳しい状況が続いている。タイ産業連盟(FTI)によると、2026年1〜2月の工場閉鎖件数は前年同期比58.43%増となる一方、新規開設は60.14%減と激減した。2月の生産能力稼働率は58.21%と、景況の節目とされる60%を割り込んでいる。
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民間の危機感とのギャップも
中銀トップが「スタグフレーションではない」と言明する背景には、市場の動揺を抑える意図もあるとみられる。タイ商工銀行合同常任委員会(JSCCIB)は今年の経済成長率を1.2〜1.6%と予測しており、物価上昇率は2〜3%に達する見通しだ。財政政策局(FPO)も中東情勢を受けての見通しを1.6%に引き下げている。ただ、インフレが供給側に起因するうちは政策金利引き上げの必要性は低いとの立場で、BOTは4月29日のMPC会合で政策金利を1%に据え置いた。
中東紛争に伴うエネルギー価格高騰がタイ経済を直撃するなか、総裁発言は民間の危機感との乖離が際立つとの声も聞かれる。在タイ日系企業にとっては、今後の金利動向と為替リスクを注視しつつ、現地の資金調達・コスト管理戦略の見直しも選択肢のひとつとなる。
