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【製造】中国が全廃した製鉄技術のIF炉  タイで操業許可に建物の構造リスクを懸念

タイ工業工場局は、環境規制違反などを理由に操業を停止させていた製鉄所に対し、再稼働を許可した。これを受け、タイ国内の建設業界や製鉄業界では不安が広がっている。

再開する工場は、中国が品質や環境面の懸念から全廃した高周波誘導炉(induction furnace、IF炉)を採用。IF炉は不純物の除去が技術的に難しく、鉄筋の強度不足が建物の構造に影響するとの懸念が根強い。タイ国内のIF炉製鉄所には現在12カ所。中国が規制を強化したことを受け、行き場を失った旧式設備がタイに流入しているという。そのため、タイ工業規格庁(TISI)による規格の見直しや、安全性を確保する新たな規制の枠組みづくりを求める声が強まっている。

タイ工業工場局は2026年6月5日、シン・コー・ユアン・スチール(SKY)に対し、東部ラヨーン県の工業団地内にある製鉄工場の再稼働を許可した。同局は2024年末、環境汚染などを理由に同工場に操業停止を命じたが、2026年3月に現地で立ち入り調査を行い、大気汚染処理システムの改善を確認。4月に実施した排気サンプルの分析でも、有害物質の濃度は基準値内に収まったという。このため、SKYがタイ工業規格庁(TISI)の定める工業規格(TIS)に適合するよう製造工程を改良したと同局は判断。今回の操業再開となった。

しかし、この決定にタイ国内の製鉄業界団体10団体が反発。SKYが採用する高周波誘導炉(IF炉)による鉄筋製造には、技術的な限界が多いためだ。IF炉は電気炉(electric arc furnace、EAF)と異なり、酸化精錬の工程を持たない。スラグ(slag)を形成して不純物を吸着・除去する機能もない。原料のスクラップ(scrap)にリンや硫黄、ボロンなどの不純物が多く含まれると、これらを取り除くのが難しく、完成した鉄筋が脆くなる欠点がある。

鉄筋を脆くするIF炉の技術的な弱点

タイ構造技術者協会(TSEA)のアモン会長は、IF炉で製造した鉄筋について、建築物の構造的な強度や安全性の観点から強い懸念を示す。理論上はIF炉でも高品質な鉄を製造できるが、実際の運用で不純物を完全に排除するのは極めて難しいという。国際水準の品質を確保するには、精錬専門のレードル炉(ladle furnace、LF炉)を追加で設置し、高品質なスクラップを厳選して投入しなければならない。ただ、これには巨額の追加投資が必要で、IF炉が持つ最大の強みである低価格という優位性が失われてします

タイ国内でIF炉が広がった背景には、2015年の工業規格改定でIF炉による製造が可能になったことがある。一方、IF炉発祥の地である中国は、品質と環境への懸念から早くにIF炉の廃止へ動いた。2017年には国内のIF炉製鉄所600カ所、生産能力にして合計1億2000万トン相当の設備を完全に閉鎖。中国がEAFへの移行を義務付けたことで、行き場を失った旧式設備が東南アジア各国に流入し、タイでも現地企業の買収や新工場の建設が進んだ。

そして、タイ工業規格庁(TISI)が2016年以降、工業規格を改定していない点を構造技術者協会などは問題視しており、早期の規格改定を求めている。低価格のIF炉製品と、国際基準を満たすEAF製品の規格を明確に分け、IF炉製品の使用範囲を危険性の低い平屋建てなどに限定すべきだとの提言もある。

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