【経済】「衝撃を吸収できなくなる」 IMFエコノミストが世界経済の脆弱化に警鐘

国際通貨基金(IMF)の前チーフエコノミストで、カリフォルニア大学バークレー校に復帰したピエール=オリヴィエ・グランシャ氏は6月27日、退任インタビューで「世界経済はショックを吸収する緩衝材を失いつつある」と警告した。中東紛争に伴うホルムズ海峡の閉鎖や産油施設への打撃を受け、各国政府は戦略石油備蓄を取り崩してエネルギー価格の急騰を抑えてきた。しかし備蓄はすでに「かなり枯渇した」状態にあり、次の紛争再燃やエネルギー供給の途絶が起きたら同じ手は使えないと強調した。
今回の危機では、備蓄の放出と精製生産の調整が組み合わさり、市場から実際に消えた石油量は当初推計(10〜15%)をはるかに下回る3%程度に抑えられた。グランシャはこの対応を評価しつつも、「次の危機が来る前に世界が緩衝材を再構築できているかが問題だ」と指摘した。脆弱な停戦が崩れてエネルギー危機が再来すれば、中央銀行と政府はさらに限られた手段で対応しなければならない状況に追い込まれる。
経済安全保障の再設計が急務
IMFは7月8日に最新の世界経済見通しを発表する予定だが、2025〜26年は信頼できる予測の基準を作ること自体が困難だったとグランシャは述べ、IMFが複数シナリオを用いてきた背景を説明した。また、関税や経済制裁は短期的には交渉力を生むものの、相手国が適応するにつれ長期的な効果は低下し、世界が複数の貿易ブロックに分断されるとも予測した。
貿易フローと経済関係が再編される中で、EUがラテンアメリカやインドとのFTA締結を加速させているよう、各国は米国依存を低減する動きを強めているとも指摘した。タイをはじめ輸入エネルギーや輸出製造業に依存するアジア経済にとっては、次の衝撃に備えたサプライチェーンの多元化と財政余力の確保が、成長同様に重要なテーマとなりつつある。
