【エネルギー】中東情勢でLNG価格高騰 タイなどASEAN諸国がガス戦略の転換模索
中東情勢の緊迫化を受けて液化天然ガス(LNG)の国際価格が危機前の水準からほぼ倍増し、天然ガスへの依存度が高いASEAN各国が電力戦略の見直しを迫られている。天然ガスはこれまで、脱炭素社会への移行を支える「橋渡し役の燃料」として重視されてきたが、2026年の市場変動は、その供給網に潜む脆さを浮き彫りにした。
タイも例外ではない。発電量の6割以上を天然ガスに頼り、その3割を輸入LNGで賄うため、国際価格の変動が電気料金に直結しやすい。タイのエネルギー規制委員会(ERC)は、燃料調整費(Ft)という仕組みで発電コストの変動を電気料金に反映させており、LNG価格の上昇はFtの引き上げにつながってきた。
燃料コストが急激に跳ね上がると、企業や家計への打撃は避けられない。物価上昇の圧力が強まり、電力会社や企業、消費者に重い財政負担がのしかかる。こうした中、太陽光発電や蓄電池(バッテリー・エネルギー貯蔵システム、BESS)への投資は、気候変動対策としてだけでなく、資源価格の急変動から経済を守る「盾」として位置づけられ始めている。
もっとも、太陽光や風力は天候によって出力が変動するため、天然ガスを完全に手放すことはできない。今後は、24時間にわたり安定的に電力を供給する「ベース電源」から、再生可能エネルギーの出力低下時に稼働を増減させる「調整電源」へと、天然ガスの役割を転換する動きが進むとみられる。ただ、この転換には発電設備の運用見直しを含む大がかりなインフラ整備が必要になる。
タイ政府はこの流れを踏まえ、2026年6月請求分から低使用量世帯の電気料金を引き下げる新制度を導入し、家庭の負担軽減を進めている。一方、工業団地や大口需要家向けの料金体系は据え置かれる見通しで、日系製造業は当面、電力コストの高止まりを前提とした事業計画が求められそうだ。
