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【IT】タイ投資委員会が大型データセンター38件承認 タイを域内デジタルハブに育成

世界のデータセンター市場は今後も高い成長が続く見通しだ。市場調査会社IMARCによると、世界のデータセンター市場規模は2024年に2136億ドルに達したが、2033年には4945億ドルまで拡大し、2025〜2033年の年平均成長率は9.29%と予測されている。成長の原動力はクラウドサービス、データ保存ソリューション、エッジコンピューティングへの需要拡大であり、IoTの普及と省エネ型インフラへの投資も追い風になっている。

この追い風はタイにも及んでいる。クルンシィ・リサーチは、タイのデータセンター業界の総収入は2025〜2027年に年平均7.5〜8.5%で成長すると予測する。政府機関や企業がデジタル変革を進め、大量データを使った戦略立案やAI活用が進んでいることがこの背景にある。

こうした中、タイ投資委員会(BOI)の投資促進委員会は最近、大型データセンター4件の投資計画を承認した。総投資額は約1,000億バーツで、タイを域内のデジタル経済拠点とし、インフラの安全保障を高めることが狙いである。承認されたのは、バンコク都内に立地するテレハウス(タイランド)の拠点(投資額約75億バーツ)、チョンブリ県アマタシティ工業団地のビスタス・テクノロジー(約91億バーツ)、パトゥムタニ県ナワナコン工業団地に立地するネクスジェン・データセンター&クラウドサービス(約267億バーツ)、同じくナワナコンに立地するジーニス・データセンター&クラウドサービス(約548億バーツ)の4件。いずれもIT負荷が高いハイパースケール級の施設で、このうちテレハウスはKDDIグループ、ビスタスはシンガポールのZDATAグループに属し、各社は世界各国で多数のデータセンターを運営している。

ナリットBOI事務総長によれば、BOIがこれまでに投資促進を認可したデータセンター案件は合計38件、投資額は4580億バーツに達しており、ITロード(IT Load)は合計2066MWになる。需要の中心は情報通信と金融・保険(BFSI)だが、今後は製造業や物流、医療など幅広い分野でデータセンター需要が増えるとみられる。

BOIはデータセンターを2つの型に分けて優遇措置を用意している。第1は「高効率エネルギー型データセンター」で、電力使用効率(PUE)が1.3以下であること、IT機器向け電力が2MW以上であること、国内外の通信拠点へ10Gbps以上の回線を複数確保し、総容量60Gbps以上とすることなど、厳格な技術条件を課す。さらに、ISO/IEC 27001の取得、24時間警備、火災防護、UPSや冷却設備の冗長化など、国際的なデータセンターレベルの設備要件も満たさなければならない。また、管理職・専門職の少なくとも半数をタイ人とする雇用条件も盛り込まれた。これらの条件を満たし、東部経済回廊(EEC)に立地する場合は法人税免除5年、その他地域では同8年が認められ、機械設備の輸入関税免除など非税の優遇措置も受けられる。

そして第2は「その他のデータセンター」で、PUEに関する条件はないものの、サービス内容やITロード、通信回線、セキュリティなどの基本要件は同じだ。ただ、税優遇はEEC立地で法人税免除3年、その他地域で5年と高効率型に比べて短い。BOIは税優遇を非EEC地域の方を手厚くすることで、地方への投資分散と電力・水資源の適切な配分を狙う。

世界的にはTikTokやGoogle、AWS、Microsoftなどの大手テック企業が、タイを含む東南アジア各国で相次ぎデータセンター投資を決めている。タイでも、TikTokが約1268億バーツ規模のデータホスティング拠点投資を発表するなど、投資案件が相次ぐ。BOIとエネルギー省は、データセンター向けのダイレクトPPA制度や再エネ電力の供給枠整備を進めており、クリーン電力との組み合わせ次第では、タイがAI・クラウド時代の「域内デジタルハブ」として存在感を高める余地は大きい。

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