【経済】2025年末商戦も節約ムード鮮明 大洪水と家計債務高止まりでタイ国内消費回復に遅れ
年末は例年、ボーナス支給や観光シーズンで消費が盛り上がる時期だが、2025年のタイではその勢いが鈍い。タイ国内購買力の弱さに加え、南部の洪水被害が観光需要を冷やし、民間企業は「節約型の年末商戦」を強いられている。
タイ工業連盟(FTI)のアピチット副会長は第4四半期を「厳しい局面」と形容し、輸出減速と高金利、家計債務の重さが成長を圧迫していると指摘。また、国家経済社会開発評議会(NESDC)は2025年の実質GDP成長率見通しを2.0%に下方修正しており、第3四半期の成長率も前年同期比1.2%にとどまった。自動車は数少ない成長分野で、バンコク近郊の「タイ・インターナショナル・モーターエキスポ2025」ではEVなど新型車の販売促進を狙い、12日間で550億バーツの経済効果と約6万台強の受注を見込むが、銀行のローン審査厳格化はいまだに緩和されていないため前年並みの水準にとどまるとの見方が多い。
また、多くの製造業では受注が減少し、10月の製造業生産指数は100を割り込んだ。住宅市場も停滞し、デベロッパー各社は大幅値引き、もしくは家賃から将来の購入に切り替える「レント・トゥ・オウン」などで在庫圧縮と資金繰り維持を図っている。南部ソンクラー県ハートヤイなどでの洪水はマレーシアなどからの陸路観光客に打撃を与え、クラビなど周辺観光地への波及も懸念されるが、国際線需要は底堅く、ハイシーズンの平均客室稼働率は8割程度が確保できると見込まれている。
政府は南部の復旧加速とあわせ、中小企業向けの低利融資や保証枠拡大など総額2670億バーツ規模の支援策、消費刺激キャンペーンを矢継ぎ早に打ち出した。家計債務残高は名目GDP比86%超と依然高水準で、利払い負担が消費拡大の重しになっている。年末商戦でどこまで家計と企業のマインドを下支えできるかが、2026年以降の成長と観光回復の勢いを左右しそうだ。
