【経済】過度のバーツ高をタイ財務省が警戒 米利下げで資金流入 輸入前倒しと外債返済加速を指示
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タイのエクニティ財務相は、タイ通貨バーツが「タイ経済システムで吸収できる水準を超えて上昇している」として中央銀行(BOT)と協議した。主要因は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げで資金が流入したためで、輸出依存の経済構造であるタイは「ここまでの過度な変動に備えていない」と警鐘を鳴らす。バーツは対ドルで4年超ぶり高値圏に達した。
タイ財務省は、輸入に頼る国営企業に輸入前倒しを指示し、国債管理庁には外貨建て債務の返済加速を求め、上昇圧力を抑える方針だ。
BOTは、金(ゴールド)の先物取引が変動を増幅し得るとして金融機関に監視強化を指示。海外向け金販売は取引ごとに裏付け書類を求め、外貨受け渡し後2営業日以内に請求書類と金の輸送・通関申告書を提出させる。外為規制改正案の意見募集も進め、大口金業者に取引データ報告を義務付けて影響を点検する案も示した。
地場銀行系カシコン研究所は、ドルは急回復しにくいとしてバーツが近く31バーツ台まで上昇する可能性を指摘。今週は年初来8.4%高(主要アジア通貨ではミャンマー・チャットの9.3%高に次ぐ)、月初来でも2.3%高となっている。中国人民元も対ドルで14カ月ぶり高値圏(7.0508近辺)にある。同研究所は、短期レンジは31.4〜31.0、2025年末は32(従来33.7)へ上方修正し、2026年は景気減速で32.8へ弱含むとみる。
輸出業界団体のダナコン会長は、バーツ建て収入減や採算悪化で中小輸出企業が苦境にあり、ヘッジ利用も限定されているとして、タイ政府に過度な変動の抑制とリスク管理を求めた。タイは周辺国のベトナムやインドネシアなどより通貨高が進んでおり、価格転嫁も難しく雇用計画にも影を落としている。
