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5⽉のタイ総合インフレ率 2カ⽉連続して上昇するもASEAN地域では最低レベル維持

タイ商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)のプンポン局長は6 月5 日、今年5 月のヘッドライン・インフレ率(変動幅の大きい生鮮食品価格とエネルギー価格も考慮した総合インフレ率)を前年比1.54%増と発表。ヘッドライン・インフレ率は23 年10 月、25カ月ぶりに前年比で減少して以来、6 カ月連続してマイナスとなっていたが、前月(4 月)は同0.19%増と7 カ月ぶりにプラスとなっていた。

5 月にヘッドライン・インフレ率が上昇したのは、世界市場での価格高に呼応し、タイでも電気・ベンジン・ガソホールなどエネルギー分野の価格が上がったためだ。このほか、酷暑により生鮮野菜や鶏卵などの生産量が減少したことも物価高につながった。

今年4 月時点でのタイのヘッドライン・インフレ率はプラス0.19%となっており、世界129 国・地域中、下から6 番目の低い数値となる。また、ASEAN では7 カ国(タイ・ラオス・フィリピン・シンガポール・インドネシア・マレーシア・ベトナム)が経済統計を公表しているが、タイのインフレ率が最も低い。なお、昨年通年の平均インフレ率は1.23%であり、139 カ国・地域中、下から数えて第9 位だった。

今年5 月のタイ国内物価上昇率であるが、飲食以外の主要品目の物価は前年比1.84%増となった。前月同様、ガソホール95 と91、E20、ベンジン95が値上がりしたほか、電気料金、家賃、日用品(パウダー、歯磨き粉)、美容院代、嗜好品(酒、たばこ、ワイン)の価格が上昇した。これに対し、値下がりたのは、軽油(ディーゼル)、洗剤、乳液、男女衣類など。電気料金は4 月に値下がりグループに属していたが、5 月は一転、値上がりグループへと移行した。

アルコール飲料を除く飲食品の価格については前年比1.13%増となった。価格が上昇したのは、生鮮野菜(長豆、トマト、なす、キュウリ、ショウガ、パクチー)、生鮮果実(マンゴー、ブドウ、バナナ)、精米、もち米、鶏卵、調理済食品、インスタントコーヒー、清涼飲料水、砂糖、練唐辛子、ココナッツなど。また、価格が低下したのは、豚肉、マナオ、プラトゥー、植物油、ニンニクなどとなっている。

ヘッドライン・インフレ率の指標となる5 月の消費者物価指数(CPI)は108.84(基準年は2019 年)で、前年比1.54%増。前月比も0.63%増加した。また、エネルギー価格と生鮮食品価格を除くコアインフレ率は前年同月比0.08%増に止まった。商務省は今年のインフレ率を0.0%~ 1.0%(中央値0.5%)のレンジ内と予測している。

今年6 月のヘッドラインインフレ率であるが、商務省ではゆっくりとした上昇を予測する。その理由として、 ①比較対象となる前年の料金が低かったことから5 月は電気料金の上昇率が高くなったが6 月は年次差が狭まること② 家庭向け電気料金の軽減措置が今年8 月まで継続すること③暑季が終わり雨季に入ったため、農産物、特に生鮮野菜の価格が低減していること④景気が十分に回復していないため、企業はコスト増をそのまま価格に反映させることができないこと―などの点を商務省は指摘。その一方で、インフレ上昇要因としては、①軽油価格が㍑当たり33.00 バーツと前年比プラスになったこと、②国際関係が安定せず、石油価格やコンテナ利用料が値上がり、製品の輸送費が上昇する可能性があること―などを挙げている。

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⽣産者物価指数(PPI)

生産者の卸売価格を指数化した生産者物価指数(PPI)であるが、今年5 月は前年比3.9%増の113.6(基準年は2015 年)となった。前月(24 年4 月)比は0.2%減となっている。PPI は企業業績・株価の先行指標ともなり、上昇が続いた場合、物価高騰を嫌った消費者の買い控えによる経済回復の遅れなどが危惧される。

5 月の部門別PPI であるが、工業製品部門は前年比4.3%増。石油化学製品、工業製品、食材加工品、ゴム・プラスチック製品、自動車、部品などの価格が上昇した。鉱業部門は世界市場における資源価格低下から、タイでも天然ガス、海塩などの価格が同16.6%減少した。また、農業漁業部門は籾米、アプラヤシ、パイナップル、サトウキビ、天然ゴム、ドリアン、生鮮野菜(一部)などの値上がりから同9.5%増と伸びている。

製造業⽣産指数(MPI)

工業省工業経済事務局(OIE)が5 月30 日に発表した今年4 月の製造業生産指数(MPI)は90.34 で前年比3.43%増となった。MPI は過去最長の18 カ月連続でマイナスとなっていたが、今回ようやくプラスに転じた。

前年比で増加した背景としては、①金、兵器、戦車、戦闘機を除く工業製品の輸出が前年同期比14.0%増となったこと、②連続して拡大している観光業の成長が続いていること、③世界経済が回復傾向にあること④比較対象となる前年同月のMPI が低かったこと―をOIE では挙げている。

一方、前月(24 年3 月)比では13.38%と大きく減少。今年1月から4 月までのMPI 平均は98.28 で、前年同期比2.06%減となっている。この時期、MPI が低下した理由としてOIE は家計負債の高止まり等に起因する消費マインドの冷え込み、および上昇するエネルギー料金などを指摘するとともに、MPI 成長見通しを0.0%から1.0% に修正。また、産業部門のGDP 成長率は、0.5% から1.5% の範囲で拡大するものと見込む。MPI は2016 年を基準年(=100)として製造業の生産活動を指数化したものであり、景気動向を判断する指標となっている。

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