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【雇用】タイの雇用主、Z世代採用に慎重姿勢 離職率とAI依存の高さを懸念

タイの若年労働力「Z世代(Gen Z)」(1996~2010年生まれ、現在15~29歳)が労働市場で存在感を増している。国家経済社会開発評議会(NESDC)の四半期報告によれば、2025年現在でGen Zはタイの労働力の18.3%に当たる約740万人を占め、2035年には主要な働き手になる見通しだ。しかし雇用主の間では、その職業観やAI依存傾向に懸念が広がっているという。

Z世代は転職や早期退職が多く、人材育成コストが回収できないとの声が根強い。英国シェフィールド・ハラム大学の調査でも、企業は「新卒より即戦力を重視」する傾向が確認されている。タイでも新卒採用をためらう企業が増え、職務経験不足がZ世代の就職機会を狭めている。実際、2024年時点でZ世代の失業率は3.8%と、全体平均1.0%を大きく上回った。

特に大卒者の失業率が2.0%と最も高く、職業教育修了者(1.4~1.8%)を上回る。長期失業者割合も上昇しており、2014年に1.2%だった「1年以上の失業経験者」は2024年には13.6%へと増加した。

AI依存とスキルに課題

Z世代はデジタル技術に強い一方で、AIへの過度な依存が問題視されているという。米大学の調査では、AIを使いすぎることで「思考力や分析力が低下する」リスクが指摘。さらに、AIの基礎理解では高得点を取る一方、効率的な活用スキルや批判的思考力では低評価にとどまっている。

NESDCは「AIの利用は業務効率を高めるが、思考力や判断力の育成を伴わなければ逆効果となる」と警鐘を鳴らす。

教育観と就労意識の変化

コンサルティングファームの調査では、タイのZ世代の16%が大学進学を選ばず、その理由として「教育の質への不安(48%)」「学費の高さ(44%)」「学習制度の柔軟性不足(19%)」を挙げた。また、教育ローン返済への不安も26%を占めた。また、起業志向も高まっており、国家統計局のデータによれば、Z世代の自営業比率はコロナ前の0.4%から現在は1.8%へ上昇している。

価値観と職場観の違い

Z世代は倫理観・価値観、そして高市早苗・自民党新総裁の就任挨拶でも言及された「ワークライフバランス」を重視。ある調査では55%が「倫理に反する仕事は拒否する」と回答した。また組織への忠誠心は低く、カシコン銀行総研によると離職率は12~15%と全世代平均の10%を上回る。こうした特徴は従来型の人材管理とは相容れず、雇用主の採用・教育コストを押し上げることにもなっているようだ。

有識者は「Z世代の特性を否定するのではなく、柔軟な就業制度やリスキリングの仕組みを整えることが重要」と指摘する。人口減少と高齢化が進む中、Z世代が今後タイ経済を支える主力労働力となることは間違いない。雇用側がその価値観と行動様式を理解し、組織改革を進められるかが大きな試金石となりそうだ。

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