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【労働】タイ新労働法で産休を120日に延長、父親にも15日休暇 少子高齢化対応で権利大幅拡充

タイ政府官報が11月7日に公布した「労働保護法(第9号)B.E.2568」により、民間労働者の産休・育児関連の権利が大きく拡充されることになった。新法は公布から30日後の12月7日に施行される。

今回の改定により、女性労働者の産休は1回の妊娠につき最大120日に延長され、そのうち60日は雇用主が通常賃金と同額を支払うことが義務づけられた。従来の産休98日、うち45日有給という規定から大きく前進する内容だ。

また、新法では、産休を取得した女性労働者が出産した子どもに重い合併症リスクや先天的な障害がある場合など、医師の診断書がある場合に限り、産休に続けて最大15日間の追加休暇を取得できる規定も追加された。これにより、母親が集中して看護にあたることを法的に支える枠組みが整ったことになる。

さらに注目されるのが、父親側の権利だ。新設された第41/1条により、労働者は配偶者の出産を支援する目的で、1回の妊娠につき最大15日間の休暇を取得できることが明記された。この休暇は出産前後のいずれの時期でも取得可能であり、子どもの出生から90日以内に行使する必要がある。賃金支払いの詳細は別条で規定されるが、多くの専門家は「事実上の育児参加休暇」と位置づけている。

また、今回の改正では、中央・地方政府機関、国営企業、公共機関などが「業務委託」や類似の形で個人を雇用している場合、その個人が実質的に管理・監督を受けて働いている場合は、労働保護法に基づく保護を受ける「労働者」とみなす規定も盛り込まれた。これにより、週休、祝日、年次有給休暇、病気休暇、産休、労働時間・休憩時間などについて、通常の労働者と同等以上の権利を保障することが、政府機関側に求められることになる。

出生率の低下と高齢化が進むタイ社会にとって、出産・育児と就労の両立を支える制度整備は不可欠。国際的に見ると、産休120日という水準はOECD諸国の中でも中上位に位置し、ASEAN域内ではシンガポールなどと並ぶ手厚い制度となる。今回の改正により、企業側には人員配置や代替要員確保といった運用上の負担も生じるが、長期的には優秀な人材の定着や企業イメージの向上につながる。

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