ITC ・IHQ投資奨励中止の背景と IBC投資恩典申請時の留意点 ~ BOI副事務局長に聞く

タイ投資委員会(BOI)は2018年12月11日の布告で、国際貿易センター(ITC)および国際地域統括本部(IHQ)の投資奨励中止を発表。同日発効した。BOIはこの日さらに、国際ビジネスセンター(IBC)に対しB1(R&D及びトレーニングのための機械のみ)の投資奨励恩典を与えることも発表するなど、急激な変化に戸惑う企業関係者は少なくない。BOIのナリット・トゥートサティアンサック副事務局長、ウィラ・パンピスットチャイ投資促進第4部部長にITC・IHQ投資奨励中止の背景、IBC投資恩典申請時の留意点などを伺った。

【Q】国際貿易センター(ITC)、国際地域統括本部(IHQ)への投資奨励が中止され、これに代わり国際ビジネスセンター(IBC)が投資奨励業種となった経緯を教えてください。
【A】タイに地域統括拠点を誘致するための投資奨励をタイ投資委員会(BOI)では2000年から始めています。当時は税制恩典、非税制恩典ともにBOIが独自に行っていました。その後、2002年に今度は財務省歳入局が地域事業本部(ROH)に対する税制面での投資奨励をスタートさせました。この時からBOIでは歳入局と共同歩調をとっています。歳入局が税制上の恩典を与え、BOIが非税制上の恩典を付与するといった役割分担が出来上がりました。
2015年には歳入局が税務恩典対象を、ROHからIHQ、部品および半製品の調達事務所(IPO)からITCへと変更。BOIでも歳入局のこの方針に追随しました。BOIと歳入局と中央銀行は常に話し合いの場を設けており、歳入局が税制面での恩典、BOIは非税制面での恩典を与えるという原則維持を常に確認していたからです。
そして今回、経済協力開発機構(OECD)がタイ政府に対しITCおよびIHQの税務恩典改善の必要性を指摘したことから、歳入局では昨年10月、ITCとIHQの税務恩典申請受付を中止するとともに、新たな恩典対象としてIBCを新設。このため、BOIもこれまでの合意に基づき、制度変更が必要になったというわけです。

【Q】IBCへの投資奨励が始まることでBOIでは投資誘致ターゲットの変更も検討しているのでしょうか。
【A】ITCおよびIHQへの投資誘致のターゲットとしたのは、製造業ではタイ国内のサポートインダストリーでした。例えば、自動車部品、電子部品、工作機械、鉄鋼、ケミカル、プラスチックなどです。実際これまで、これらの業種による申請が中心となっていました。IBCでも同様の業種からの申請があることを期待しています。一方、国別では日本が最多で、以下、シンガポール、EU、中国、米国と続いています。いずれにしても、ITCとIHQでは日本企業からの申請が最も多かったため、IBCとなっても誘致ターゲットのトップは日本企業となります。

【Q】昨年10月、歳入局がITCおよびIHQの税務恩典申請受付を中止し、IBCに一本化するという変更を行いました。投資条件も厳しくなりましたが、これにより影響を受けた日本企業はほとんどなかったようです。しかし今回のBOIによる変更には大きな反応がありました。すでにITCの投資恩典を受けている企業も先行きを心配しています。すでに投資恩典が与えられている企業も奨励条件変更に対応する必要があるのでしょうか。
【A】誤解をされている方もおりますが、すでに投資奨励を受けている企業に対して投資条件が変更されることはありません。IBCの投資奨励条件が適用されるのは昨年12月11日以降に申請した企業に対してだけです。

【Q】輸出用製品の原材料輸入時の関税免除特典を得ている企業はこれからも毎年更新することが必要ですか。
【A】はい。既存のITCは今後も輸出用製品の原材料輸入時の関税免除特典を受けることができます。ただ、これまで通り、投資奨励法36条に基づき投資恩典を毎年申請することが必要となります。

【Q】ただ、この関税免除特典はIBCの投資奨励恩典には含まれないのですね。
【A】その通りです。

【Q】すでにITCおよびIHQの投資奨励を得ている企業にとって必要となる対応は何かありますか。
【A】すでに投資奨励を受けている企業がIBCに変更する必要はありません。IBCでは雇用面での条件が厳しくなっており、関税免除もありません。そのため、我々もすでにITCおよびIHQの投資恩典を得ている企業がIBCに変更するケースはないとみています。

【Q】12月10日以前にITCおよびIHQの投資奨励を申請したが、BOI担当官とのインタビューをしていない企業、もしくは審査結果の通知を受けていない企業はどのようにしたらいいのでしょうか。
【A】これまで通り、ITCおよびIHQとしての投資奨励を受けることができます。12月10日以前に投資奨励申請を提出している企業は今回の変更による影響を受けることはありません。

【Q】歳入局への税務恩典申請をしていない場合はいかがでしょうか。
【A】歳入局では昨年10月10日から申請受付を中止しています。そのため10月9日以前に税務恩典の申請をしていない場合には、今後申請することはできません。

【Q】IBCの投資奨励を申請する企業はすでに出ていますか。
【A】布告直後から電話による問い合わせが続いています。そのなかには申請のための詳細を聞いてくる企業もあります。

【Q】IBCの投資奨励条件に専門スタッフを最低10人雇用するというものがありますが、この10人に経営者は含まれますか。
【A】この10人は原則として、IBC事業に直接関係している人である必要があります。経営者の場合は、直接事業に関与しているかどうかをチェックします。IHQ、ITC、IBCと一口でいっても事業内容はさまざまです。経営者はいろいろな事業を監督しており、IBC事業には直接関与していないケースもあります。しかし、企業によってはIBC事業がメイン事業となっており、この場合は経営者も深くかかわっている可能性もあります。経営者をカウントするかどうかはケースバイケースです。

【Q】ということは、会計および総務はカウントしないということですね。
【A】そうです。審査では10人のポジションおよびジョブディスクリクションをチェックしますので、申請者は各人の職務を明確に示す必要があります。

【Q】10人はいつまでに雇用する必要がありますか。
【A】フル操業申請をする前までです。

【Q】シンガポールのマスコミでは、今回のタイでの制度変更により、企業がIHQ設立のためタイからシンガポールに戻ってくるかもしれない、とも報じています。
【A】それはないと思います。タイ政府はタイを国際ビジネスのハブにしようとしており、BOIおよび財務省からの投資恩典は企業にとり魅力的なものであると確信しています。今回のIBCへの投資奨励も多くの企業の関心をひくと考えています。

BOIでは業種に基づく恩典をA1~A4、B1~B2の6グループに分類しており、B1は「高度技術を使用しないがバリューチェーンにとって重要な裾野産業」と規定されている。B1グループの企業は原則として法人所得税は免除されないが、機械輸入税の免除、輸出向け原材料の輸入税免除などの恩典が付与されている。

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