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国際⾒本市 「METALEX 2023」~ユニーク技術をアピールする東京都企業

ASEAN 最大級となる工作機械・金属加工関連の国際見本市「メタレックス(METALEX)2023」がバンコク国際貿易展示センター(BITEC)で2023年11 月22 日から25 日まで開催された。50 カ国・地域から2500 を超えるブランドの工作機械および金属加工技術のプロバイダーが新たな製品やソリューションを披露し合う同イベントは今回で37 回目となる。4 日間の来場者数は9 万8686人に達し、前年を1 万人以上上回った。

公益財団法人・東京都中小企業振興公社は今回もパビリオンを設け、東京都企業12 社の出展を支援。加工技術・部品、生産設備・器具など業種は多岐に渡り、すでにタイに現地代理店を持つ企業は自社製品・サービスのPR、またタイに拠点のない企業は代理店探しも目的として参加した。

目次

銅管腐食を防ぐ酸化防止剤 ~「東洋溶材」

低温溶接棒・フラックスの製造販売および銅パイプ曲げ加工・金属加工などを主力事業とする東洋溶材(東京都板橋区)は、ノンアルコールタイプの酸化防止剤を紹介した。この防止剤をロウ付け部分に集中して最適量噴射することで銅管腐食(蟻の巣状腐食)を防ぐことができるという。同社は日米で特許を取得しており、銅管ロウ付け用酸化防止剤のパイオニアとして周知されている。

銅管と銅管をロウ付けする際、日本では一般に銅管内に窒素を充填する。この措置をとらないと銅管内部が酸化し、酸化した部分の煤(すす)が接続している機械装置を詰まらせることがあるからだ。日本は以前、この窒素ブローが銅管内酸化防止の主流であったが、その後、これに酸化防止剤というジャンルが加わった。東洋溶材は日本のゼネコンやサブコンの間で「酸化防止剤なら東洋溶材」といわれるまでの地位を築いている。

例えば、数カ所のロウ付けで繋いだ銅管がかなりの長さになる場合も、窒素ブローでは銅管内すべてに窒素を充填する必要がある。しかし、酸化防止剤の場合、ロウ付け箇所の内側に吹き付けるだけで済む。その後、外部から加熱しても粘着物質のゲルから還元性ガスが発生し、加熱部内部の酸化を防ぐことができるためだ。

酸化防止剤はロウ付け部分だけに使用すればいいため、窒素ブローと比較して低いコストで済む。三嶋貴比古・海外市場開拓部部長によれば、同社にとり今回がタイ初出展となるが、窒素ブローを扱っているタイのメーカーから代理店契約を打診される場面が多かったという。

360°を高画質で記録できるカメラ ~ TSP

防犯・監視・分析カメラ事業を展開するTSP(ティーエスピー)(東京都豊島区)は、俯角付き車上用魚眼レンズと12MP(メガピクセル)の高解像度センサーを搭載したカメラ、そして、このカメラを使用したソリューションを紹介した。世界初の技術で作られたこのレンズを組み込むことでカメラの側面360°全周を高画質で記録できるほか、レンズに俯角を設けたことによりカメラ設置場所より低い位置の撮影も可能にした。

例えば、通常のドライブレコーダーはカメラ下部が死角となり、他車のナンバープレートが写らなかったり、また写ったとしても数字がぼやけていたりすることが少なくない。その点、特許出願中の同社魚眼レンズは撮影範囲が広がるため、ナンバープレートを撮影できるほか、12MP と解像度が高いことから数字もはっきり視認できる。小川達也社長によれば、日本では警察・消防など緊急車両のほか、インフラ工事、建築、調査などのシーンで活躍しているという。

この高性能カメラを導入した、人材不足解消・安全対策強化などの課題を解決するソリューションも同社は提供。例えば、自動車の展示会場ではどの車に興味を持ったかなどの注目度を計測してマーケティングに生かすことができる。また、工場ではフォークリフトが警戒エリアに入った場合に注意喚起を行うなど安全対策のソリューションとすることも可能だ。なお、同社はタイを最初の海外進出国として選んだが、万引きソリューション提案などによりインド市場への進出も視野に入れる。

漏電事故・火災を未然に防止する ~ Thai So Brain

東京都中小企業振興公社パビリオン以外でも東京都企業は存在感を放っていた。2023年7 月にタイ法人・Thai So Brain(タイ・ソーブレイン)を設立したSo Brain(東京都千代田区)が紹介したのは「True R 技術」(ベクトル理論Igr 方式)による漏電測定・診断技術および関連機器だ。同技術により危険な漏洩電流を正確かつ迅速に検出し漏電事故・火災を未然に防止することができるという。

漏電ブレーカーや漏電リレーが計測する漏洩電流は、「配線や配電装置の劣化による漏洩電流成分」(Ior)と「インバーターから発生するノイズ(高調波)成分」(Ioc)に区分される。このうち、ノイズ成分(Ioc)は発熱しないため直接の脅威とはならないが、それでも漏電ブレーカー・漏電リレーの誤発報を引き起こし点検の手間もかかるため、タイの工場では取り外されていることもある。

これに対し、本当に怖いのは配線や配電装置の劣化による漏洩電流成分(Ior)だ。漏洩電流の量が増えると発熱し周囲のゴミを燃やし火災が発生、最悪の場合、感電による即死の危険性もある。ただ、従来の漏電ブレーカー・漏電リレーでは危険成分であるIor だけを区別して計測することができなかった。そして、このIor のみ計測する方式としてSo Brainが開発したのが同社が特許を所有する「True R 技術」となる。

タイでのビジネス展開であるが、まずハンディタイプの漏電測定器で工場のどの箇所で漏電しているかを診断。漏電箇所確認後、機器メンテナンスや配線再工事を行い、その後、監視装置を設置する。この監視装置は危険成分であるIor が設定値以上になった時のみ警報ランプを表示するとともに、警報情報を管理サーバーに送信。工場を漏電による火災から守る極めて有効な対策となる。

Thai So Brain の林浩史社長によれば、ブースを訪れたのは日系企業とタイローカル企業が半々。特にタイローカル企業が漏電対策に頭を痛めており、同社の説明を聞いた後、「漏電ブレーカーや漏電リレーだけでは不十分」との認識を高めていたという。日系企業でも漏電対策は大きな課題であり、タイ中部の企業から簡易検査の依頼が来ているとのことだ。

CO2 排出量見える化・削減 ~ アスエネ

「次世代によりよい世界を」をミッションに二酸化炭素(CO2)のワンストップソリューションを提供するアスエネ(東京都港区)は、「CO2 排出量見える化・削減」「ESG(環境・社会・バナンス)評価サービス」「カーボンクレジット取扱い支援」などを通じて、脱炭素社会の創造に貢献している。同社の主要サービスとしては、CO2 など温室効果ガス排出量の算出・可視化、スコープ1 ~ 3 のサプライチェーン全体を対象とした温室効果ガス削減支援などがある。同社システムでは、電気料金請求書など必要書類・資料の画像をアップロードすることでAI が判断し、スコープ1 ~ 3 の温室効果ガス排出量の回収・算出を自動計算する。スコープ3 の排出量算出は今後の課題とする企業が少なくないが、日本のプライム市場では7 ~ 8 割の企業がスクープ3 までのデータを取得しているという。同社では、企業ごとに適切な削減目標を設定し、再エネ・省エネサプライヤー・カーボンオフセット(クレジット・非化石証書の購入)などCO2 削減に向けた最適な手法を選択・実行していく。

一方、ESG 評価サービスであるが、海外営業兼海外事業開発の佐藤祐菜氏は、タイではESG 評価に関心を持つ工場が多いと話す。メタレックスの会場では100 社を超える企業関係者に対応したが、ESG 評価について関心の高いタイ企業関係者が目立ったという。特に、鉄鋼や金属加工関連企業では、EU が導入した国境炭素調整措置(CBAM)での課税が始まる2026 年を視野にESG 評価への関心が一気に高まる可能性を指摘。ESG 評価はサプライヤーにとり大手企業に自社商品・サービス売り込む際の自社PR 材料ともなりうることから「マーケットのポテンシャルを大きく感じる」と力を込める。

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