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建設的な労使関係の構築に向けたタイ労使ワークショップ開催 積極的な労使対話呼びかけ

人件費・原材料価格上昇、他社との競争激化、国内需要低迷など在タイ日系企業を取り巻くビジネス環境が厳しさを増すなか、良好な労使関係を構築することは重要な経営課題となっている。このなか、海外に進出した日本企業の労使紛争未然防止および解決を支援している全日本金属産業労働組合協議会(金属労協、JCM)は、労使対話を通じた建設的な労使関係構築を目的とする労使双方参加型「タイ労使ワークショップ」を2013年2月、タイで初めて開催。その後回数を重ねており、6 月19日には9回目となるワークショップがバンコク都内のホテルで行われた。

ワークショップに参加したタイ労働省労働保護福祉局のクロークライ・ナソムヨン監察総監は、業務のデジタル化が進んだことで労使形態が複雑になり労使合意に至らず対立が長期化するケースが増えていると指摘。ストライキやロックアウトに繋がることも少なくないという。同局の統計では、2020年から24年までに労働組合が団体交渉を行った回数は約 2200回。このうち80%は妥結したが、残り20%はストライキなど争議行為に突入している。こ活動の労働争議の防止・解決が労働保護福祉局の最重要課題のひとつとなる。

クロークライ監察総監によれば、同局は現在、パートナーシップ型の労使関係を構築するため積極的な労使対話を促すことに力を入れているという。「デモやロックアウトは時代遅れだ。対立後ではなく、対立する前に介入し、労使問題を解決する」と強調する。同局はよりよい労使関係の構築を推進するため、「優秀な労使関係表彰制度」を設けており、企業に参加を呼び掛けている。

ワークショップでは経営者団体および労働組合の幹部もスピ―チ。タイ経営者連盟(ECOT)のシリワン・ロムチャットン事務局長は、タイの主要産業である自動車業界では内燃機関車から電気自動車(EV)への転換期ともいえる状況を迎えており、先行き不透明感の漂う難しい局面を乗り切るためには労使の協力が不可欠と明言。この点、タイ自動車労働組合会議(ALCT)のタナッタ・カンマウォン会長も「自動車業界は近い将来、100年に1度の変革期を迎えるであろう。今年は重要な年であり、政労使の三者協力が極めて重要」との見方を示す。

タイ電機・自動車・金属労連(TEAM)のラレー・ユーペンサック会長からは「ストに突入するのは得策ではない。強い者が生き残るのではなく、変化に対応できる者が生き残る時代となっている」と過去にとらわれない柔軟性を求める提言があった。

目次

タイ国内労働組合の活動経緯と現状

タイ国⾃動⾞産業労働組合

いすゞのグループ企業であり、自動車部品の金型製造・販売及びプレス加工を主力業務とするタイインターナショナルダイメーキング社(TID)の労働組合である「タイ国自動車産業労働組合(IAT)」は組織率76.15%で、組合員811人を抱える。設立は1998年であり、2013年に現在の名称に改名した。

タイでは労働組合の中心メンバーが解雇の憂き目にあうなど組合潰しが少なくなかったが、TID経営陣は労働組合設立当初から活動に協力的だったという。2009年には組合幹部の外部セミナーへの参加を許可。2018年からは組合委員長は専従とすることが認められた。このほか、2000年から組合専用の部屋を提供し文房具等を支給。2009年には組合費を給与から天引きすることができるようにして徴収の便宜を図った。また、2013年からは就業時間のうち年間8時間を組合の新人教育に使うことを許可。2021年から会社側が必要と認めた場合には社用車1台を日を超えて利用できるようになった。

2019年から労働組合の研修プログラムのうち、年間2件に限り、必要経費の一部を補助。2021年からは大規模定期大会に参加する場合に限り、送迎バスを提供するほか、年間3万バーツの補助金が支給されることになった。

このため、労働省が介入を余儀なくされた団体交渉は組合設立から現在までの26年で1回だけとのことだ。

フォード&マツダタイ労働組合

マツダおよびフォードのタイ生産拠点として設立された合弁会社オートアライアンス(タイランド)の労働組合である「フォード&マツダタイ労働組合」のタイポン・ウィティシ委員長によれば、2001年に労働組合が結成された当時は労使関係が悪化しており、毎年激しい交渉が行われ、ロックアウトも起きていたという。

そこで、労使双方が関係改善に尽力。タイ人コンサルタントを入れ、会社としてのゴールと、組合としてのゴールをすり合わせたマスタープランを作成することになった。

組合員の福利厚生を充実させ、病欠・出家・出産・結婚時は1000バーツを給付。また、死亡時の給付金は組合員が5万バーツ、その家族が3000バーツとなった。組合執行部は30人体制で、専従7人、事務員1人。車3台のほか、1台につき月6000バーツのガソリン代も支給される。職業訓練など人材育成も充実させており、ここ10年ほどは良好な労使関係が継続しているとのことだ。

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