タイ国ペット関連商品市場 ⾼齢化社会もペット飼育増を後押し 売上は前年⽐12%増
タイ大手地銀TTB の経済分析センターであるTTB アナリティクスによれば、2024 年のタイ国内ペット関連商品市場はこれまでに前年比12.4%増の7500 億バーツに達した。同市場が成長しているのはペットを家族の一員とみる世帯が増えている点が大きく、食費・医療費・遊具代・衛生用品代、保険などペットに費やす金額は現在、年平均4 万1100 バーツに及ぶ。さらに、タイで急速に進む高齢化により自宅にいる時間の増えた高齢者がペットを飼い始めるケースの増えていることも成長を後押ししているという。現在、タイ国内で飼われているペットは犬が1200 万匹、猫が800 万匹となり、この両者で大半を占めるが、市場としては猫63%、犬31%、ウサギ・鳥・魚などが6%となり、犬より猫の飼い主の方が支出の多いことが分かる。
今年10 月30 日から11 月1 日までの3 日間、タイのバンコク国際貿易展示場(BITEC)で「PetFair South East Asia 2024」が開催され、日本、中国など32 カ国・地域から約400 社が出展した。開催期間中、75 カ国・地域から1 万5000 人が会場を訪れている。
アニフル(本社:岡山県岡山市)
今回、ジャパンブースに出展した「アニフル」(本社:岡山県岡山市)は犬用サポーター、コルセット、介護用品などを紹介した。同社は医療用品メーカーのダイヤ工業(本社:岡山県岡山市)から3年前に分社。ダイヤ工業はヒト用のコルセット、サポーターなどを約60 年間製造しているが、10年前からは動物用の製造も始めていた。
これまでは日本国内だけで販売していたが、タイ、中国、ベトナムで犬用コルセットが認知されていないことからペットの生活の質向上のため、代理店探しを目的として海外の見本市に初めて出展した。
アニフルの粕井康平セールスマネージャーによれば、腰を痛めた犬がメインターゲットであり、フィリピンの動物病院関係者が強い関心を示したとのことだ。
Biペットランド(本社:兵庫県宝塚市)
ペットフードおよびペット用品の輸入販売を手掛ける「Biペットランド」(本社:兵庫県宝塚市)は、純国産のドッグフードを出品した。同品の特徴は、科学的酸化防止剤・合成着色料・総合栄養食の基準を満たすために使用されるサプリメント・塩・粉(ミール)を排除し、肉と魚は生肉だけを使う点だ。さらに、ドッグフードの品質を保ち、嗜好性を高めるため、ノンオイルコーティングも実現した。市販されているドッグフードはオイルコーティングされているものが多いが、これをノンオイルコーティングとすると、消化しやすくなり、また、脂肪を分解する臓器である肝臓、老廃物を排斥する腎臓のトラブルを予防できるという。岩崎弘之代表取締役社長は「最大でも20 年しか生きられないペットに美味しく安全なフードを与えてほしい」と呼び掛ける。
ただ、無添加でオイルコーティングもしないことから腐りやすくなり、食材の質を高めることが必須となる。そのため輸送は船で1 週間以内に運べる範囲内に限定される。タイはこの輸送可能範囲に含まれる。また、現地生産の打診も今回受けたという。
見本市開会式で挨拶した商務相顧問団のプシット氏は、ペット産業、特にペットフード産業の重要性を強調した。タイは現在、ドイツに次ぐ世界第2 位のペットフード輸出国であり、2024 年第1 ~ 3 四半期(1 ~ 9 月)で前年比26%増の22 億米㌦を超えている。
一方、ぺットフードの安全基準を明確にしている米国や欧州と異なり日本は基準がなく、その点で日本のペットフードは軽視されているという。そのため、岩崎社長は日本の獣医師グループと協力しエビデンスを明確にし、「米国、欧州に次ぐ第3 のカテゴリーを構築したい」と力を込める。
ハイペット(本社:大阪府大阪市)
ペットフード・ペット用品の製造企画販売を行う「ハイペット」(本社:大阪府大阪市)はうさぎ用フードを展示した。犬は散歩が必要であり、猫は鳴き声が苦情となることもあるが、うさぎは鳴かない、外出しない、人懐こい、寿命も15 年と犬・猫と同程度であり、ペットとする人が少なくない。
今回前面に出したのがグルテンフリーのうさぎフードだ。うさぎは毛づくろいの際に飲み込んだ毛が胃や腸などの消化管内で毛玉となり、腹部に留まることがある。橋本順司代表取締役社長によれば、この毛玉の要因がグルテンとの仮説があることから、可能性排除のため、グルテンフリーフードを開発製造した。今回、ブースを訪れた人の中にもこの仮説を知っている人がいたという。過去にインドで出展したが、タイは初出展。目的はタイ国内の代理店探しだ。
ティーエスアイ(本社:東京都文京区)
ペット関連製品の出品増えるタイの⾒本市今年8 月30 日から9 月1 日までバンコクで開催されたバンコク日本博2024 で東京都中小企業振興公社は都内企業の出展をサポートした。1995 年の創業以来、人とペットの生活を豊かにする製品・サービスを提供してきた「ティーエスアイ」(本社:東京都文京区)はアトピー性皮膚炎の予防・改善が期待されるエミューオイル配合のペット用スキンケア製品を紹介した。同社のエミューオイルは、北海道網走で育ったエミューの脂肪組織により搾取・精製された動物油であり、人間の皮脂に近い脂肪酸組織から成り、「高浸透性」「保湿作用」「抗炎症作用」を兼ね備える。
同社は4 年前に動物用ボディクリームとして開発販売。その後、広範囲に塗ることができるようにエアゾール化し、2 年前にシャンプーの販売も始めた。川田隆幸取締役によれば、現在、九州、関東、東北など400 店舗に納品。飲み薬の補助として使われているという。
海外進出を狙う同社は、東京都中小企業振興公社の海外見本市出展支援を受け、進出先としてまずタイを選んだ。会場では代理店、病院関係者が関心を示したという。同社は日本で動物病院に販売しているため、タイでもまず動物病院にペットシャンプーを売り込む考えだ。
なお、東京都中小企業振興公社事業戦略部販路・海外展開支援課の山本康博課長によれば、ライフスタイル分野では、化粧品とともに、ペット関連商品の出展が増えているという。
ペットの⽣活環境改善もテーマに健康食・イノベーションなどをテーマとしたイベントが9 月11 日から13 日までBITEC で開催され、ここでタイ企業「PICOALIVE」は猫のトイレの砂に混ぜることで臭いを消す微生物商品を紹介した。脱臭効果、殺菌効果があるため、頻繁な砂の交換が必要
なく、出費を抑えることができるという。6年前からラザダやフェイスブックなどを通じて2 カ月分289バーツでオンライン販売をしている。
ペットのトイレの臭いは飼い主にとり悩みの種でもあるが、最近タイで販売が始まった室内空気循環式小型脱臭装置「PJ-2」も解決策のひとつ。この製品は空気清浄機では取れない室内の不快な臭いを消すもので、悪臭やウイルスを含む空気を装置内に吸い込み、UV オゾンランプで有機分子をすべて分解し脱臭と殺菌を実現する。元々、新型コロナ対策として開発れた製品で、現在、日本のオフィス、飲食店、喫煙室、病室、介護施設、ペット部屋などで利用されている。
迷⼦になったペット発⾒のためのソリューションペットの健康面をケアするタイ企業「OSTECH」は栄養価の高いペット用フードを紹介したが、合わせてデザイン性の高いペット用タグも販売。このタグに飼い主の電話番号を印刷し首輪などに取り付け、ペットが行方不明になった際、善意の人がそのタグをみて飼い主に電話をしてくれることを期待するというわけだ。
ただ、個人情報保護の観点からすると自身の電話番号を公開するのは一抹の不安が付きまとう。そこで、インターネット無料通話サービス「THISIS」を運営するTHISIS 社( 本社:東京都世田谷区) は、迷子になったペットの発見をサポートする「ペットタグ powered by THISIS」の利用を提案する。これは、迷子になったペットを見つけてくれた人が、ペットの首輪の取り付けたペットタグのQR コードをスマホのアプリで読み取るだけで、ペットの飼い主と通話できるというものだ。専用アプリダウンロード、会員登録、友達申請など一切不要のため、発見者(発信者)も飼い主(受信者)もともにプライバシーを守ることができる。インターネット無料通話サービス「THISIS」は今年5 月からタイでの利用が可能になった